圧力損失

工場のステンレスの配管に圧力計が2つ付き、上流の圧力計の針が高く、曲がりと弁を通った下流の圧力計の針が低く、圧力が下がっている様子を描いたイメージ(AI で生成)

ホースの先を指でつぶすと水の勢いが変わり、長いホースほど先から出る水が弱くなります。管の中を流れる水や空気は、流れるうちに少しずつ圧力を失っていきます。この失われる圧力が圧力損失(圧損)です。このページでは、圧力損失の意味と式、管の太さ・曲がり・弁でどれだけ変わるか、ポンプやフィルター、圧縮空気の配管でどう効くかを、できるだけやさしく説明します。

目次

ひとことで言うと

圧力損失とは

圧力損失は、流体が管や機械の中を通るあいだに失われる圧力です。入口の全圧から出口の全圧を引いた値で表し、単位は圧力と同じ Pa(パスカル)です(日本語版ウィキペディア「圧力損失」、サイバネットシステム)。

原因は、壁との摩擦と、断面が急に変わる所や曲がりでできる渦・乱れです(サイバネットシステム)。失われたエネルギーは熱になって戻らないので、圧力損失が大きいほど、流すためにポンプやファンの大きな動力が要ります。

管の上に4つの圧力計を並べ、入口から出口へ向かって針が低い側へ動き、下のグラフで圧力が右下がりの線になり、入口と出口の差が圧力損失ΔPであることを示した図
図1 流れるうちに、圧力は少しずつ下がっていく
出典:ウィキペディア日本語版、サイバネットシステムをもとに AI(Claude)で作成

日本語版ウィキペディアは、粘りのある流体の流れでは、圧力損失がゼロの流れは理論上ありえない(熱力学第二法則)としています。流すかぎり、損失は必ず出るので、設計では「どれだけ小さくするか」「どれだけ見込むか」を考えます。

出典:圧力損失|ウィキペディア日本語版、圧力損失|サイバネットシステム

式と単位:ダルシー・ワイスバッハの式と損失係数

まっすぐな管の損失ΔP=λ×(L÷D)×ρv²÷2と、曲がり・弁などの局所損失ΔP=ζ×ρv²÷2の2つの式と記号の意味、配管全体の損失は両方の合計で、どちらも動圧ρv²÷2に比例すること、単位はPaで水なら約10kPaが約1mの損失水頭にあたることを示した図
図2 圧力損失の式:まっすぐな管の分 + 曲がり・弁などの分
出典:ウィキペディア日本語版、川口液化ケミカル、プラントエンジの樹をもとに AI(Claude)で作成

まっすぐな管(直管)の圧力損失は、ダルシー・ワイスバッハの式 ΔP = λ ×(L/D)× ρv²/2 で求めます(川口液化ケミカル)。λ は管摩擦係数、L は管の長さ、D は内径、ρ は密度、v は平均の流速です。日本語版ウィキペディアは、同じ式を損失水頭(高さ)で h = λ × L × v²/(2gD)と書いていて、層流では λ = 64/Re、乱流ではコールブルックの式やムーディ線図で求めるとしています(Re はレイノルズ数。基礎知識 「レイノルズ数」)。

曲がりや弁、入口・出口などの損失は局所損失(形状損失)といい、ΔP = ζ × ρv²/2 で求めます。ζ(ゼータ)は損失係数で、部品の形で決まります(プラントエンジの樹)。どちらの式にも出てくる ρv²/2 は、流れの勢いを圧力で表した動圧です。配管全体の圧力損失は、直管の分と局所損失の分を足して求めます。

単位:Pa と「損失水頭」

圧力損失の単位は Pa(=N/m²)です(サイバネットシステム)。配管では kPa や MPa もよく使います。液体では、圧力損失を液体の高さに直した損失水頭(m)で表すことも多く、水なら約10 kPa が約1 m にあたります(日本語版ウィキペディア「圧力損失」の損失水頭の式から編集部が換算)。ポンプの「揚程」も高さで表すので、損失水頭で考えると比べやすくなります。

出典:ダルシー・ワイスバッハの式|ウィキペディア日本語版、圧力損失|ウィキペディア日本語版、圧力損失 (Pressure Loss)|川口液化ケミカル、損失係数・相当長さとは?|プラントエンジの樹、圧力損失|サイバネットシステム

いちばん効くのは管の太さと流速

管の長さを2倍にすると圧力損失は約2倍、流速を2倍にすると約4倍、流速は同じで内径を半分にすると約2倍、流量は同じで内径を半分にすると約32倍になることを4つのカードで示した図
図3 何を変えると、圧力損失はどれだけ変わる?
出典:川口液化ケミカルをもとに AI(Claude)で作成

川口液化ケミカルは、ダルシー・ワイスバッハの式から、管の内径が半分なら圧力損失は2倍、管の長さが2倍なら2倍、流速が2倍なら4倍になり、流量はそのままで内径を半分にすると、流速が4倍になるので圧力損失は32倍になると説明しています。管摩擦係数 λ を一定とみたときの目安で、実際の乱流では λ も少し変わるので、なめらかな管では約27倍です(編集部の計算)。

計算例:同じ流量で、管の太さを変える

水(20℃)を毎分40リットル流したとき、まっすぐな管10mあたりの圧力損失が、内径16mmで約71.6kPa、22mmで約15.8kPa、28mmで約5.0kPa、35mmで約1.7kPaになることを示した横棒グラフ
図4 計算例:同じ流量でも、管が細いと圧力損失は急に大きくなる
出典:オーム社、ウィキペディア日本語版をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成

水(20℃、動粘度1.004 × 10⁻⁶ m²/s。オーム社の水の物性値。密度は1,000 kg/m³ に丸めた)を毎分40リットル、長さ10 m のなめらかな管に流したときを計算しました。乱流の管摩擦係数には、なめらかな管の近似式(ブラジウスの式)λ ≒ 0.316 Re^−0.25 を使っています。内径22 mm では約16 kPa ですが、16 mm に細くすると約72 kPa と4倍以上になります。35 mm に太くすれば約1.7 kPa です(編集部の計算)。

MONO塾の解説は、水や海水の配管の流速の目安を1〜2 m/s とし、その理由に、流速が2倍になると圧力損失が4倍になることと、速い流れで内壁がすり減る(エロージョン)のを防ぐことを挙げています。上の例では、内径22 mm で流速約1.75 m/s です。

出典:圧力損失 (Pressure Loss)|川口液化ケミカル、空調・暖房・衛生設備の計算図表 p.16 水の物性値(正誤表、PDF)|オーム社、ダルシー・ワイスバッハの式|ウィキペディア日本語版、配管内の流速を上げない理由は?|MONO塾

曲がり・弁・入口の損失(局所損失)

内径22mm、水(20℃)毎分40リットルの配管で、まっすぐな管10mが約15.8kPa、角ばった入口(ζ=0.5)が約0.8kPa、90°エルボ4個(ζ=1.3×4)が約8.0kPa、玉形弁全開(ζ=10)が約15.4kPa、出口(ζ=1)が約1.5kPaで、曲がり・弁などの合計約26kPaがまっすぐな管の約16kPaより大きいことを示した横棒グラフ
図5 計算例:曲がりや弁の損失は、まっすぐな管の損失より大きいこともある
出典:プラントエンジの樹をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成
部品損失係数 ζ の例メモ
管の入口0.03〜0.5形による(角ばった入口ほど大きい)
管の出口1.0出口ではいつも1.0
90°エルボ約1.3大きさ・曲がりの半径で変わる
玉形弁(全開)約6〜15全開でも流れが曲がる。口径・型式で変わる
バタフライ弁0.24〜751開き角で大きく変わる(実験の一例)

表の値は、プラントエンジの樹の解説にある例です。出口の ζ は常に1.0、玉形弁は全開でも約6〜15と大きいのが特徴です。同じ解説は、ζ は管の径が変わると調べ直しが要ること、部品の損失が直管の何 m 分にあたるかで表す相当長さという方法もあることを説明しています。

上の図は、内径22 mm・毎分40リットルの例で、直管10 m(約16 kPa)に、入口・90°エルボ4個・玉形弁・出口を足したものです。入口・出口・曲がり・弁の合計は約26 kPa で、直管10 m の分より大きくなりました(ζ は表の目安の値を使った例。編集部の計算)。キーエンスも、玉形弁(グローブバルブ)は全開でも中の流路が曲がっていて圧力損失があり、ボールバルブは全開でまっすぐ通るので損失がない、と説明しています(実際にはごく小さい損失はあります。編集部の補足)。

断面が急に変わる所

構造計画研究所のコラムは、急に広がる所・急に狭まる所の損失係数は面積の比を使った式で求められ、急に狭まる所では、縮んだあと再び広がる部分の損失が主になるとしています。段差や絞りは、なめらかな形にするだけで損失を減らせます(編集部の解説。課題「流体抵抗・圧力損失を減らしたい」)。

出典:損失係数・相当長さとは?|プラントエンジの樹、圧力損失とその原因|キーエンス、【流体】熱と流れの不思議vol.3 圧力損失②~形状損失~|構造計画研究所

ポンプ・ファンとの関係

横軸に流量、縦軸に揚程をとり、右下がりのポンプの性能曲線と、実揚程から流量の2乗で上がる配管の抵抗曲線が交わる点が運転点になることを示した模式図
図6 ポンプは、配管の抵抗曲線との交点で動く
出典:中小機構 J-Net21をもとに AI(Claude)で作成

J-Net21 は、ポンプの全揚程のうち、吐出しと吸込みの水位の差の実揚程は流量によらず一定の「固定抵抗」で、残りの配管抵抗などは流量の2乗に比例する「変動抵抗」だとしています。この関係を線にしたのが配管の抵抗曲線で、ポンプはその性能曲線との交点(運転点)の流量で動きます(編集部の解説)。圧力損失が大きい配管ほど抵抗曲線が立ち、同じポンプでも流量が減ります。

J-Net21 は、弁で流量を絞る代わりに回転数を下げると、ポンプ・送風機の動力は回転速度の3乗に比例して減り、回転速度を20%下げれば動力は約49%減るとしています。ただし、実揚程が大きいほど、流量を減らしても省エネの効果は小さいとも書いています(課題「工場の電力を減らしたい」)。

計算例:圧力損失から動力を見積もる

流体を送る動力は圧力損失ΔP×流量Qで、約42kPa×毎分40リットル(0.000667m³/s)で約28W、効率50%のポンプなら軸の動力は約56Wになることを示した計算の表
図7 計算例:圧力損失の分だけ、ポンプの動力が要る
出典:この記事の内容をもとに編集部が計算し、AI(Claude)で作成

流体を送るのに要る動力は、圧力損失 ΔP(Pa)× 流量 Q(m³/s)で求められます(単位は W。編集部の解説)。前の例の約42 kPa を毎分40リットルで流すと約28 W、効率50%のポンプなら軸の動力は約56 W です(効率は説明のための仮の値。編集部の計算)。圧力損失を半分にすれば、同じ流量に要る動力も半分になります。

出典:ポンプの実揚程と省エネ効果|中小機構 J-Net21、ポンプや送風機の回転速度調整による省エネとは?|中小機構 J-Net21

ものづくりでどう効くか

圧縮空気の配管

J-Net21 は、コンプレッサーの吐出圧力を0.8 MPa(絶対圧)から0.1 MPa 下げると理論上の動力は約8%減り、漏れの減少も含めて約10%の省エネになるとしています。そのうえで、配管の全体の圧力損失は0.1 MPa 程度に抑えるのが目標とし、配管の口径の見直しや、玉形弁をボール弁やバタフライ弁に替える対策を挙げています。アトラスコプコも、コンプレッサーから最も遠い使う所までの配管の圧力損失を0.1 bar(0.01 MPa)以下に抑え、主な配管(メインヘッダーなど)の流速は6〜7 m/s 以下にするよう勧めています。

配管で圧力が下がる分だけ、コンプレッサーの圧力を高めに設定しなければならず、そのぶん電力が増えます(編集部の解説)。

フィルター

フィルターを使った時間とともに、ほこりがたまって圧力損失(差圧)が上がっていき、初期の圧力損失の2倍と3倍の線を超えるあたりが交換の目安になることを示した模式図
図8 フィルターは、目詰まりで圧力損失が上がる
出典:アサヒフィルタサービス、英和商工をもとに AI(Claude)で作成

空気のフィルターは、ほこりをためるほど空気が通りにくくなり、圧力損失が上がります。アサヒフィルタサービスは、最終の圧力損失は初期の圧力損失の2〜3倍としています。英和商工は、中性能〜高性能のフィルターでは、圧力損失が1.5倍になった頃をメンテナンスの目安の一つとしています。フィルターの前後の圧力の差(差圧)を見張れば、交換の時期がわかります(課題「クリーンルームの清浄度を保ちたい」)。

冷却の水路・熱交換器

冷却の水路や熱交換器では、流速を上げたり流路を細かくしたりすると熱は伝わりやすくなりますが、そのぶん圧力損失も増えます(編集部の解説)。MONOist の冷却設計の連載は、圧力損失の見積もりには管の内面の粗さを知る必要があり、内径10 mm と15 mm では圧力損失が大きく変わると説明しています。ポンプの能力と相談しながら、熱と圧力損失のつり合いを決めます(課題「熱交換器を小さくしたい」)。

ポンプの吸込み側

ポンプの吸込み側の配管で圧力損失が大きいと、ポンプの入口の圧力が下がり、液体の中に泡ができるキャビテーションの原因になります(編集部の解説。課題「ポンプのキャビテーションを防ぎたい」)。吸込み側は、太く短く、曲がりを少なくするのが基本です。

出典:圧縮空気システムの省エネのポイントは?(その1:吐出圧力の低減)|中小機構 J-Net21、圧縮空気配管のサイズ設定|アトラスコプコ、第13回 圧力損失・効率・寿命|アサヒフィルタサービス、空調機に欠かせないエアフィルターの交換時期は?|英和商工、乱流の円管内の流れと圧力損失の見積もり|MONOist

計算どおりにならないとき・注意すること

温度で粘度が変わる、汚れ・さび・スケールで内面が粗く細くなる、気体で圧力が大きく下がると膨らんで流速が変わる、流量計・ストレーナーにも損失がある、の4つの注意を並べた図
図9 計算どおりにならないとき
出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成
  • 温度:冷たい水や油は粘度が高く、レイノルズ数が小さくなって管摩擦係数が大きくなります。使う温度の物性で計算します(基礎知識 「粘度」)。
  • 内面の粗さと汚れ:乱流の管摩擦係数は内面の粗さでも変わります(日本語版ウィキペディア「ダルシー・ワイスバッハの式」)。さびやスケールがつくと、内面が粗くなり内径も細くなるので、古い配管は新品の計算より損失が大きくなります(課題「配管・熱交換器のスケールを防ぎたい」)。
  • 気体:圧力が大きく下がると気体は膨らんで流速が変わるので、損失が大きいときは区間に分けて計算します(編集部の解説)。
  • 流量計・ストレーナー:キーエンスは、差圧式・カルマン渦式の流量計や、流路を絞ることのある羽根車式は圧力損失が大きく、電磁式・熱式・超音波式は小さいとしています。ごみ取りのストレーナーも目詰まりで損失が増えます。

出典:ダルシー・ワイスバッハの式|ウィキペディア日本語版、圧力損失とその原因|キーエンス

似ている言葉との違い

圧力損失(圧損)、圧力降下、損失水頭(損失ヘッド)、管摩擦係数λ、損失係数ζ、相当長さ、動圧、差圧の意味を1行ずつ並べた早見表
図10 圧力損失まわりの言葉の早見表
出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成

圧力損失と圧力降下はほぼ同じ意味で使われ、損失水頭は同じものを高さで表したものです。直管の損失は管摩擦係数 λ、部品の損失は損失係数 ζで計算し、足し合わせる、と覚えておきましょう(編集部の解説)。

出典

  1. 圧力損失|ウィキペディア日本語版
  2. 圧力損失|サイバネットシステム
  3. ダルシー・ワイスバッハの式|ウィキペディア日本語版
  4. 圧力損失 (Pressure Loss)|川口液化ケミカル
  5. 損失係数・相当長さとは?|プラントエンジの樹
  6. 空調・暖房・衛生設備の計算図表 p.16 水の物性値(正誤表、PDF)|オーム社
  7. 配管内の流速を上げない理由は?|MONO塾
  8. 圧力損失とその原因|キーエンス
  9. 【流体】熱と流れの不思議vol.3 圧力損失②~形状損失~|構造計画研究所
  10. ポンプの実揚程と省エネ効果|中小機構 J-Net21
  11. ポンプや送風機の回転速度調整による省エネとは?|中小機構 J-Net21
  12. 圧縮空気システムの省エネのポイントは?(その1:吐出圧力の低減)|中小機構 J-Net21
  13. 圧縮空気配管のサイズ設定|アトラスコプコ
  14. 第13回 圧力損失・効率・寿命|アサヒフィルタサービス
  15. 空調機に欠かせないエアフィルターの交換時期は?|英和商工
  16. 乱流の円管内の流れと圧力損失の見積もり|MONOist

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の設備ではありません。

情報の確認日:2026年10月8日

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