機械や柱を床や基礎に留めるとき、コンクリートに固定して使うのがアンカーボルトです。コンクリートにあとから穴をあけて留める「あと施工アンカー」と、打つ前に入れておく「先付け」があります。このページでは、種類としくみ、壊れ方、施工の注意を順に説明します。
アンカーボルトとは:ひとことで言うと
アンカーボルト
コンクリートなどの母材に埋め込み、構造部材や設備機器を固定するボルトです。
引っぱる力(引張)と横にずらす力(せん断)を受けて、固定したものが離れたり、動いたり、倒れたりしないようにします。

出典:Wikipedia「アンカーボルト」をもとに AI(Claude)で作成
使われる所の例は、次のとおりです。
| 使う所 | 留めるもの |
|---|---|
| 木造の建物 | 土台、ホールダウン金物 |
| 鉄骨の建物 | 柱の脚を基礎のコンクリートに |
| 鉄筋コンクリートの建物 | 柱・梁・床・壁に設備機器やH形鋼を |
先付けとあと施工:いつ入れるかで2つに分かれる

出典:Wikipedia「アンカーボルト」、JCAA「あと施工アンカーの基礎知識」をもとに AI(Claude)で作成
先付けはコンクリートを打つ前、あと施工は固まったあとに取り付けます。
| 先付け | あと施工 | |
|---|---|---|
| 取り付ける時期 | コンクリートを打つ前 | コンクリートが固まったあと |
| 固定のしかた | 鉄筋に番線で結ぶ、型枠や位置決めの治具に留める | 穴をあけ、拡張や接着で固着する |
| 確かめること | 打つ前に埋込み長さと出の長さを確認する | 穴の径と深さ、切粉の除去 |
出典:アンカーボルト|Wikipedia、あと施工アンカーの基礎知識|一般社団法人 日本建設あと施工アンカー協会(JCAA)、あと施工アンカーの施工手順|一般社団法人 日本建設あと施工アンカー協会(JCAA)
先付けのアンカーボルトの形

出典:JIS B 1178:2009、コンクリート工学年次論文集 Vol.45をもとに AI(Claude)で作成
先付けでは、先端の形でコンクリートに引っかけて抜けにくくします。JIS B 1178(基礎ボルト)は、形によって L 形、J 形、LA 形、JA 形の4種類を定めています。
日本建築学会の各種合成構造設計指針は、設備機器などを据え付ける先付けのアンカーボルトとして、頭付きアンカーボルト、鉄筋アンカーボルト、基礎アンカーボルトを示しています。
出典:JIS B 1178:2009 基礎ボルト(kikakurui.com の掲載ページ)、磯雅人ほか「Y字型定着体をもつ鉄筋アンカーボルトの引抜き挙動」コンクリート工学年次論文集 Vol.45(2023)
あと施工アンカーの種類

出典:JCAA「あと施工アンカーの基礎知識」をもとに AI(Claude)で作成
日本建設あと施工アンカー協会(JCAA)は、あと施工アンカーを金属系、接着系、その他に分けています。
金属系:広げて留める
孔の中で拡張部が開き、孔の壁に機械的に固着します。方式によって、打ち込んで施工するものと、ナットをトルクで締めて施工するものがあります。
| 方式 | 施工のしかた |
|---|---|
| 芯棒打込み式 | ナットと座金を付けて挿入し、芯棒をハンマーで打ち込んでからナットを締める |
| 内部コーン打込み式 | 専用の打込み棒で打ち込み、ボルトで器材を取り付ける |
| 本体打込み式 | 専用の打込み棒で、手応えや音が変わるまで打ち込む |
| スリーブ打込み式 | スリーブの向きを確かめて打ち込み、取付物を置いてナットを締める |
| ウェッジ式・テーパーボルト式 | 挿入して指定のトルクで締め付ける。トルクで施工を管理する |
接着系:接着剤で留める
孔に入れた接着剤が化学反応で硬化し、定着部を固着します。接着剤の入れ方には、カプセル方式と注入方式があります。カプセル方式はアンカー筋を回転・打撃しながら埋め込み、注入方式は孔底から樹脂を入れて、アンカー筋を手で回しながら埋め込みます。
硬化の時間は温度で変わります。例えばケー・エフ・シーのケミカルアンカー RQ タイプ(低温速硬用)は、20℃ で 5 分、5℃ で 25 分、0℃ で 45 分、−10℃ で 2 時間です。製品ごとに違うので、説明書で確かめてください。
その他のアンカー
金属系・接着系以外のアンカーです。材質(金属、プラスチックなど)も、固着の方法(打込み、ねじ込みなど)もいろいろあります。
出典:あと施工アンカーの基礎知識|一般社団法人 日本建設あと施工アンカー協会(JCAA)、あと施工アンカーの施工手順|一般社団法人 日本建設あと施工アンカー協会(JCAA)、ケミカルアンカー RQ タイプ|ケー・エフ・シー(イプロス掲載)
どう壊れるか:耐力は弱い所で決まる

出典:コンクリート工学年次論文集 Vol.33、コンクリート工学年次論文集 Vol.36、コンクリート工学年次論文集 Vol.45をもとに AI(Claude)で作成
接着系アンカーの設計式の一つは、鋼材の降伏、コンクリートのコーン状破壊、付着で決まる耐力を別々に計算し、いちばん小さい値を使います。ボルトを太くしても、コンクリート側で先に壊れれば耐力は上がりません。
| 壊れ方 | 何が起きるか | 関係すること |
|---|---|---|
| ボルトの破断 | 鋼材が降伏し、切れる | ボルトの材料と太さ |
| コーン状破壊 | ボルトのまわりのコンクリートが円すい状に抜ける | 埋込み長さ、コンクリートの強さ |
| 付着破壊 | 接着の面ですべって抜ける | 埋込み長さ、孔の清掃、接着剤の充填 |
| へりの割れ | 縁に近い所で、コンクリートの角が割れる | へりあき(縁までの距離) |
埋込み長さで、壊れ方は変わります。Y字型の定着体をもつ鉄筋アンカーボルト(先付け)の引抜き試験では、縁の影響がない試験体で、埋込みが長くなるほど耐力が上がり、コーン状破壊から付着破壊、本体の破断へと移りました。一方、縁の近く(隅の部分)に置いた試験体は、すべて角の割裂破壊でした。
コーン状破壊では、ボルトの軸から 45° に広がる円すい状の面を想定した試験が行われています。コーン状破壊は脆性的で、鋼材の破壊に比べて変形が小さいまま壊れます。
出典:大和征良ほか「接着系あと施工アンカーの引張強度と靭性に関する実験的研究と各種設計式の設計引張耐力比較検討」コンクリート工学年次論文集 Vol.33(2011)、白井佑樹ほか「組合せ荷重を受けるアンカーボルトの力学的挙動に関する実験研究」コンクリート工学年次論文集 Vol.36(2014)、磯雅人ほか「Y字型定着体をもつ鉄筋アンカーボルトの引抜き挙動」コンクリート工学年次論文集 Vol.45(2023)
施工の注意:不具合で耐力が大きく変わる
打込み式の流れ

出典:JCAA「施工手順」、サンコーテクノ「オールアンカー Cタイプ」をもとに AI(Claude)で作成
穴は施工面に直角に、製造者が指定する径と深さであけ、孔の中の切粉を取り除きます。接着系では、吸じん、深さの確認、ブラシ掛け、再度の吸じんの順で清掃します。硬化の時間内は、アンカー筋を動かしません。

出典:SANKO TECHNO (サンコーテクノチャンネル)(YouTube)
寸法の例として、サンコーテクノのオールアンカー Cタイプ(芯棒打込み式)の値を挙げます。実際に使う製品の表で確かめてください。
| 項目 | M12 の値 |
|---|---|
| 穿孔径 | 12.7 mm |
| アンカー埋込み長さ | 50 mm(C-1260 だけ 40 mm) |
| 穿孔深さ | 62 mm 以上(C-1260 だけ 52 mm 以上) |
| 締付けトルクの目安 | 31 N・m |
出典:あと施工アンカーの施工手順|一般社団法人 日本建設あと施工アンカー協会(JCAA)、オールアンカー Cタイプ|サンコーテクノ
不具合でどれだけ下がるか

出典:国土技術政策総合研究所資料をもとに AI(Claude)で作成
国土技術政策総合研究所が M16 の樹脂カプセルで不具合を模擬した試験では、健全なもので 84 kN でした。鋼材の長さを 10D から 2.5D に短くしたもの(Dは呼び径)は 17 kN まで下がり、接着剤の充填率が 25%(口元に空洞)のものは 30 kN でした。
注入方式で孔の壁との付着がほとんどない状態を模擬したものは 6 kN でした。一方、この試験の範囲では、5° の斜め削孔は 81 kN、孔の径を大きくしたものは 87 kN で、耐力は大きく下がっていません。不具合の種類によって、影響の大きさが違います。

出典:SANKO TECHNO (サンコーテクノチャンネル)(YouTube)
出典:国土技術政策総合研究所資料 第6章「あと施工アンカーの不具合と引張耐力の関係性の検証」
鉄骨の柱脚のナット:ダブルナットの締め方

出典:日建連「鉄骨工事 Q&A B-1-6」をもとに AI(Claude)で作成
鉄骨の柱脚では、ナットを2つ使うことがあります。先に締めるナットで固定し、後から締めるナットは戻り止めにします。日建連の Q&A が紹介する日本鋼構造協会の指針の手順は、次のとおりです。
| 順番 | 作業 |
|---|---|
| 1 | 下ナットを手で締めてから、原則としてトルクレンチで1次締めする(目標は M16〜M22 で 70 N・m 程度、M30〜M42 で 200 N・m 程度) |
| 2 | ボルト、ナット、座金、ベースプレートにかけて一直線に印を付ける |
| 3 | 締付け方向に 10〜30° 程度追い締めし(ボルトが太いほど小さくしてもよい)、印のずれで確かめる |
| 4 | 上ナットを締めて戻り止めにする |
これは建築の鉄骨の例です。機械の据付では、機械メーカーの指示に従ってください。
出典:鉄骨工事 Q&A B-1-6 アンカーボルト|日本建設業連合会(日建連)
アンカーボルトの話が出てくるページ
出典
- アンカーボルト|Wikipedia
- あと施工アンカーの基礎知識|一般社団法人 日本建設あと施工アンカー協会(JCAA)
- あと施工アンカーの施工手順|一般社団法人 日本建設あと施工アンカー協会(JCAA)
- JIS B 1178:2009 基礎ボルト(kikakurui.com の掲載ページ)
- 磯雅人ほか「Y字型定着体をもつ鉄筋アンカーボルトの引抜き挙動」コンクリート工学年次論文集 Vol.45(2023)
- ケミカルアンカー RQ タイプ|ケー・エフ・シー(イプロス掲載)
- 大和征良ほか「接着系あと施工アンカーの引張強度と靭性に関する実験的研究と各種設計式の設計引張耐力比較検討」コンクリート工学年次論文集 Vol.33(2011)
- 白井佑樹ほか「組合せ荷重を受けるアンカーボルトの力学的挙動に関する実験研究」コンクリート工学年次論文集 Vol.36(2014)
- オールアンカー Cタイプ|サンコーテクノ
- 国土技術政策総合研究所資料 第6章「あと施工アンカーの不具合と引張耐力の関係性の検証」
- 鉄骨工事 Q&A B-1-6 アンカーボルト|日本建設業連合会(日建連)
※図は、出典の説明をもとに編集部がまとめた模式図です。
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品・装置ではありません。
情報の確認日:2026年11月2日
