校正(と調整・検定の違い)

金属の作業台の上に、ブロックゲージを測定面で挟んだマイクロメーター、ケースに並んだ長さの違うブロックゲージ、デジタルノギスがあるイメージ(AI で生成)

「校正とは何か」「調整や検定とどう違うのか」。ものさし・はかり・温度計などの計測器を使う職場では、よく出てくる言葉です(このページは計測器の校正の話です。文章の誤りを直す「校正」は扱いません)。計測器の校正は、計測器が示す値と、正しさがわかっている標準とを比べて、ずれ(器差)を求めることです。このページでは、校正の意味、調整・検証・検定との違い、マイクロメーターを例にした校正のやり方、国家標準までつながるトレーサビリティと JCSS、校正の間隔(周期)の決め方、品質の規格で求められることを、図で順に解説します。

目次

校正とは:ひとことで言うと

校正とは

計測器は、使っているうちに少しずつずれます。そこで、値がわかっている標準(標準器)を測って、計測器の読みがどれだけずれているかを調べるのが校正です。たとえば、10.000mm とわかっているブロックゲージを測って 10.001mm と出たら、その計測器は 0.001mm 大きく示す、とわかります。

大事なのは、校正は「ずれの量を求めて記録すること」で、計測器を直すことは含まないという点です。ずれを小さくするために計測器に手を加えるのは「調整」、決められた範囲に入っているかの合否を出すのは「検証」や「検定」と呼んで区別します。

校正・調整・検証・検定の違いの表:校正は標準と比べてずれ(器差)を求め、計測器に手を加えず、合否を出さず、法律の期間はなく使う側が間隔を決める。調整はずれが小さくなるよう計測器に手を加え、校正で外れたときに行い、そのあと再校正する。検証は器差が決められた範囲に入るかを確かめ、手を加えず、合否を出す。検定(計量法)は取引・証明に使う特定計量器を検査し、合否を出し、合格すると検定証印が付き、有効期間がある計量器が多い
図1 校正・調整・検証・検定の違い
出典:法令リード、ビカ・ジャパン(イプロス ものづくり)、宮城県計量検定所をもとに AI(Claude)で作成

日本の計量法は、第2条第7項で「計量器の校正」を、その計量器が表示する量と、計量器の標準となる量との差を測定することと定めています。ここには、差を小さくする作業は入っていません。

出典:計量法(平成四年法律第五十一号)第2条・第16条|法令リード

校正でやること:標準と比べて、ずれ(器差)を求める

マイクロメーターの校正の例:外側マイクロメーターの測定面の間に、呼び寸法10mm の標準器(ブロックゲージ)を挟む。マイクロメーターの読みは 10.001mm。差は 10.001−10.000=+0.001mm で、1μm 大きく示すマイクロメーターとわかる。校正の環境の例は温度10〜30℃、湿度20〜80%
図2 校正の例:マイクロメーターをブロックゲージで校正する
出典:日本建築総合試験所をもとに AI(Claude)で作成

日本建築総合試験所の「わかりやすい試験シリーズ」は、マイクロメーターの校正を次のように説明しています。標準器のブロックゲージを測定面の間に挟み、マイクロメーターの読み(指示値)を読み取って、差を確かめます。10mm のブロックゲージで 10.001mm と読めたら、指示誤差は+0.001mm で、1μm 大きな値を示すマイクロメーターだとわかります。校正は温度10〜30℃、湿度20〜80%の環境で行う、としています。

同じ資料は、マイクロメーターを標準器(ブロックゲージ)で校正することで、国家計量標準へのトレーサビリティを確保できる、としています(トレーサビリティは下の節で解説します)。実際の校正では、1点だけでなく測る範囲の何点かで差を求め、結果を校正証明書や記録に残します(編集部の解説)。

出典:わかりやすい試験シリーズ 校-05 マイクロメータの校正|日本建築総合試験所

ビカ・ジャパン(圧力計・温度計のメーカー)の解説も、校正を、国家規格・国際規格で認証された基準器と、校正する計測器の測定結果を比べて、どの程度の器差があるかを確認することと説明しています。

出典:計器の校正について~校正、検証、調整とは?~【動画紹介】|ビカ・ジャパン(イプロス ものづくり)

校正・調整・検証・検定の違い

校正の結果からの流れ図:校正で器差を求め、器差が許容範囲内ならそのまま使い、記録やラベルで状態を示す。範囲外なら調整(計測器に手を加える)をして、再校正する。範囲外だったときは、それまでに測った結果に影響がないかを確かめ、必要なら処置する
図3 校正の結果と、調整・再校正の流れ
出典:ビカ・ジャパン(イプロス ものづくり)、コスモ計器をもとに AI(Claude)で作成

調整:ずれを小さくするために、計測器に手を加える

ビカ・ジャパンの解説は、調整を、検出された器差を精度の範囲内に抑えるために、計測器に手を加えることとしています。校正と検証では計測器に手を加えないのに対し、調整は手を加えることが許される作業です。調整をしたら、もう一度校正して、ずれが小さくなったことを確かめます(再校正。編集部の解説)。

検証:決められた範囲に入っているかの合否を出す

同じ解説は、検証を、計測器の器差が公的機関などの規格で決められた範囲に入っているかを確かめて、合否を判定することとしています。校正は「ずれがいくつか」を示すだけで合否は出しません。コスモ計器(校正事業者)のコラムも、校正には合否の概念がない、と書いています。

出典:計器の校正について~校正、検証、調整とは?~【動画紹介】|ビカ・ジャパン(イプロス ものづくり)、『校正』とは何か 第4回 ISO 9001 と『校正』後編(コラム)|コスモ計器

検定:取引・証明に使う計量器の、法律にもとづく検査

検定は、計量法にもとづく検査です。宮城県計量検定所の説明では、取引や証明に使う計量器などのうち、法律で決められた特定計量器(はかり、ガスメーター、水道メーター、電力量計、タクシーメーター、体温計など)について、都道府県知事や指定検定機関が一定の水準を満たすかを検査して合否を出し、合格品に検定証印を付けます。検定には有効期間があるものが多く、たとえば水道メーター(口径350mm 以下)は8年、騒音計は5年です。はかり(質量計)は、取引・証明に使う場合、2年に1回の定期検査を受けなければなりません。

計量法の第16条は、検定証印などが付いていない特定計量器や、有効期間を過ぎた特定計量器を、取引・証明の計量に使ったり、使うために持っていたりしてはならない、としています。工場の中で品質を確かめるための校正と、取引・証明のための検定は、目的も根拠も違うことを覚えておくと迷いません。

出典:特定計量器の検定等|宮城県計量検定所、計量法(平成四年法律第五十一号)第2条・第16条|法令リード

校正調整検証検定(計量法)
すること標準と比べて器差を求める器差を小さくするよう計測器に手を加える器差が決められた範囲に入るかを確かめる特定計量器が一定の水準を満たすかを検査する
合否出さない—出す出す(合格すると検定証印)
主な目的測った値の正しさの裏付け計測器を使える状態に戻す使ってよいかの判定取引・証明の公正

※表は、上の出典(計量法、ビカ・ジャパン、宮城県計量検定所)をもとに編集部がまとめたものです。

トレーサビリティと JCSS:国家標準までつながる校正

トレーサビリティの連鎖の図:上から国家計量標準(経済産業大臣が指定)、産総研・日本電気計器検定所・指定校正機関(国家標準をもとに校正し標準を供給)、JCSS 登録事業者(ISO/IEC 17025 に適合、JCSS 標章付きの校正証明書)、会社の中の標準器(ブロックゲージ・標準温度計・分銅など)、現場の計測器(ノギス・マイクロメーター・温度計・はかりなど)。測った値をさかのぼって国家標準までたどれる。段ごとに不確かさが加わる
図4 トレーサビリティ:国家標準までつながる校正の連鎖
出典:製品評価技術基盤機構(NITE)、北九州市をもとに AI(Claude)で作成

校正に使う標準器も、それ自体が正しいことを確かめておく必要があります。標準器をさらに上の標準で校正し、その標準をさらに上で…とたどっていくと、最後は国の標準(国家計量標準)に行き着きます。このつながりを「計量トレーサビリティ」といいます。北九州市のページは、計量トレーサビリティの定義(ISO/IEC Guide 99:2007 によるもの)を、個々の校正が測定の不確かさに寄与する、文書化された切れ目のない校正の連鎖を通して、測定結果を基準に関連付けることができる性質と紹介しています。

つまり、校正の連鎖が途切れず、それぞれの校正の記録があり、段ごとの不確かさ(測った値がどれくらいの幅でばらつきうるか)が示されていることが条件です。上の段で校正するたびに不確かさが少しずつ加わるので、現場の計測器の不確かさは、国家標準より大きくなります(編集部の解説)。

出典:計量のトレーサビリティについて|北九州市

JCSS:計量法にもとづくトレーサビリティの制度

日本では、計量法にもとづく JCSS(計量法トレーサビリティ制度)があります。NITE(製品評価技術基盤機構)によると、JCSS は「計量標準供給制度」と「校正事業者登録制度」の2本柱です。国家計量標準は経済産業大臣が指定し、産業技術総合研究所(産総研)、日本電気計器検定所、経済産業大臣が指定した指定校正機関が、登録事業者に標準を供給します。登録の基準の一つは、校正をする事業所の能力の国際規格 ISO/IEC 17025 に適合していることで、登録された事業者は、JCSS の標章の入った校正証明書を出せます。登録は25の区分(長さ、質量、温度など)ごとに行われます。

NITE は、JCSS が2000年11月に国際的な相互承認(ILAC の MRA)に署名したことも紹介しています。NITE のよくあるお問い合わせ(FAQ)は、JCSS の標章を付けた校正証明書なら、トレーサビリティの体系図がなくても、校正結果が国家計量標準にトレーサブルであることの証明になる、としています。

なお、北九州市のページは、市が基準器などを使って行う検査(基準器検査)は JCSS にもとづく校正とは異なるため、その検査に合格しても、計量トレーサビリティの根拠にはできない、と注意しています。

出典:JCSS の概要|製品評価技術基盤機構(NITE)、JCSSよくあるお問い合わせ(FAQ)|製品評価技術基盤機構(NITE)、計量のトレーサビリティについて|北九州市

校正の間隔(周期)の決め方

校正の間隔を決める要素の図:中心に「校正の間隔:法律で一律に決まっていない」。まわりに、使う頻度、使う環境(温度・粉じん・振動)、メーカーの指示、品質の規格の要求(ISO 9001 など)、社内の規定、お客さまの規定。参考として、取引・証明に使う計量器の検定には、計量器ごとに有効期間が決まっているものがある
図5 校正の間隔(周期)は、使う側が決める
出典:製品評価技術基盤機構(NITE)、ビカ・ジャパン(イプロス ものづくり)、宮城県計量検定所をもとに AI(Claude)で作成

「校正は何年ごとにすればよいか」は、よく聞かれる質問です。NITE のよくあるお問い合わせ(FAQ)は、JCSS 校正証明書に有効期間はなく、再校正は計測器の使用頻度や使用環境などから利用者が検討する、と答えています。ビカ・ジャパンの解説も、校正の有効期限は法律で決まっておらず、メーカーの指示、品質保証の規格の要求、社内の規定、お客さまの規定など、実務の決まりで左右される、としています。

決めるときは、よく使う計測器、ぶつけやすい・粉じんや温度変化の多い所で使う計測器ほど、間隔を短めにするのが基本の考え方です。前回の校正でずれが大きかった計測器も、間隔を見直すきっかけになります(編集部の解説)。これに対して、取引・証明に使う特定計量器の検定には、上の節のとおり計量器ごとの有効期間があります。

出典:JCSSよくあるお問い合わせ(FAQ)|製品評価技術基盤機構(NITE)、計器の校正について~校正、検証、調整とは?~【動画紹介】|ビカ・ジャパン(イプロス ものづくり)

ものづくりで校正が効く場面:品質の規格と、さかのぼり

ISO 9001 が測定機器に求めることの4項目:a 決めた間隔で、または使う前に、国家標準などにたどれる標準で校正または検証をする。b 校正したことと時期をラベルなどで示し、状態がわかるようにする。c 校正の状態を無効にする勝手な調整や損傷・劣化から守る。合わないと分かったら、それまでの測定結果が正しかったかを確かめる
図6 品質の規格(ISO 9001)が測定機器に求めること
出典:コスモ計器をもとに AI(Claude)で作成

工場で校正が求められる大きな理由が、品質マネジメントの規格 ISO 9001(JIS Q 9001)です。コスモ計器のコラムが引用している JIS Q 9001:2015 の 7.1.5.2「測定のトレーサビリティ」は、トレーサビリティが要求されている場合などに、測定機器について、a)定められた間隔で又は使用前に、国際計量標準又は国家計量標準にトレーサブルな計量標準に照らして、校正か検証(または両方)を行う、b)状態を明確にするために識別する、c)校正の状態やその後の測定結果を無効にしてしまう調整・損傷・劣化から保護する、ことを求めています。

さらに、測定機器が目的に合っていないと分かったときは、それまでに測った結果の妥当性を損なうかどうかを明確にし、必要に応じて処置をとることも求めています。たとえば、校正で大きなずれが見つかったマイクロメーターで、前回の校正から測って合格にした部品がないかをさかのぼって確かめる、という対応です。そのためにも、いつ・どの計測器で測ったかを記録しておくことが役に立ちます(編集部の解説)。

出典:『校正』とは何か 第4回 ISO 9001 と『校正』後編(コラム)|コスモ計器

寸法の測り方は技術ページ「三次元測定機・形状測定」、荷重・力の測定と校正は技術ページ「ひずみゲージ・ロードセル」、量産のばらつきの見方は技術の基礎知識「工程能力指数(Cp・Cpk)」で解説しています。

出典

  1. 計量法(平成四年法律第五十一号)第2条・第16条|法令リード
  2. わかりやすい試験シリーズ 校-05 マイクロメータの校正|日本建築総合試験所
  3. 計器の校正について~校正、検証、調整とは?~【動画紹介】|ビカ・ジャパン(イプロス ものづくり)
  4. 『校正』とは何か 第4回 ISO 9001 と『校正』後編(コラム)|コスモ計器
  5. 特定計量器の検定等|宮城県計量検定所
  6. 計量のトレーサビリティについて|北九州市
  7. JCSS の概要|製品評価技術基盤機構(NITE)
  8. JCSSよくあるお問い合わせ(FAQ)|製品評価技術基盤機構(NITE)

※図は、出典の説明をもとに編集部がまとめた模式図です。図2の数値は、日本建築総合試験所の資料の例です。

※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。

情報の確認日:2026年10月29日

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次