同じ槽で同じように混ぜているのに、上と下で濃度が違う。粘い液では翼のまわりだけが動き、壁ぎわの液がいつまでも残る。粉を入れたらダマが浮いて溶けない。粉どうしを長く混ぜたのに、取る場所で成分が違う。撹拌・混合のむらは、液の粘さや粉の性質に、翼・槽・混合機の形が合っていないことで起きることが多くあります。
このページでは、撹拌・混合のむらでよく出る困りごとを5つに分け、翼・じゃま板・分散機・粉体の混合機・混ざり方の確かめ方のどれが効くかを整理します。小さな試験の条件を大きな槽に移すときの考え方はラボの条件を量産に移せない、加熱・冷却の温度むらは加熱・冷却の温度むらで品質がばらつくでも扱っています。困っていることから、次のマトリクスで候補になる対策を確かめてください。
課題と解決技術のマトリクス
| 課題(症状) | 翼の形・大きさを見直す | じゃま板・偏心で流れを変える | 高せん断の分散機・粉の入れ方 | 粉体の混合機を選ぶ | 混ざり方を測る・解析する |
|---|---|---|---|---|---|
| A槽の上下で濃度・温度が違う/粒子が底に沈む | ○ | ◎ | ○ | ||
| B粘い液で、翼のまわりしか動かない | ◎ | ○ | ○ | ||
| C粉が液に入らない・ダマ(ままこ)になる | ◎ | ○ | |||
| D液面に渦ができ、空気を巻き込む・泡立つ | ○ | ◎ | △ | ||
| E粉どうしの混合で、むら・偏析が出る | ◎ | ○ |
◎ 第一候補○ 有効△ 条件によって有効
※記号は一般的な傾向に基づく目安です。どの対策が合うかは、液の粘度と密度、粒子や粉の大きさと量、槽の形と大きさ、今の翼とじゃま板、混ぜる時間の目標によって変わります。症状Aの「じゃま板・偏心」の「◎」は、じゃま板が混合不良のもとになる旋回の流れを抑えるとする解説(新潟大学の講義資料)と、槽の中の旋回流を混合に有利な上下の循環流に変えるとする説明(名古屋工業大学ほかの論文)、翼を槽の直径の5〜10%ずらすと上下・半径方向の循環が増えるとする説明(ビメーズ)、「翼の形・大きさ」の「○」は、粒子の均一浮遊を平均で半分の動力で達成したとする大型翼(神鋼環境ソリューション)、「混ざり方を測る・解析する」の「○」は、粒子が底に残らない状態を透明な槽で目で見て決める方法(新潟大学の講義資料)と、撹拌槽の流れを計算する専用のソフト(アールフロー)を示しています。症状Bの「翼の形・大きさ」の「◎」は、アンカー翼・ヘリカルリボン翼が主に高粘度液用とする論文(名古屋工業大学)と、大型翼が広い粘度範囲で使えるとする説明(同)、100Pa・s まで使えるとする大型翼(神鋼環境ソリューション)、「高せん断の分散機」の「○」は、高粘度用の低速翼と高速の分散翼を1台にしたミキサー(井上製作所)、「混ざり方を測る」の「○」は、脱色法や流れの観察で、混ざらない輪の形の所を見つけた研究(名古屋工業大学)を示しています。症状Cの「高せん断の分散機・粉の入れ方」の「◎」は、高速でせん断できる機器ならダマができる前に分散でき、できてしまったダマも物理的に壊せるとする説明(ユニテックフーズ)と、粉体を液体に分散させる系に適するとする高速撹拌機(みづほ工業)、「粉体の混合機」の「○」は、散りやすい粉と先に粉どうしで混ぜてから液に入れる方法(ユニテックフーズ)を示しています。症状Dの「じゃま板・偏心」の「◎」は、じゃま板で渦(ボルテックス)が消えるとする研究(神戸大学)と、偏心で液面の渦を抑え、空気の巻き込みや泡立ちの対策になるとする説明(ビメーズ)、「翼の形・大きさ」の「○」は、液面が平らで邪魔板が要らないとする往復回転式の撹拌機(島崎エンジニアリング)、「高せん断の分散機」の「△」は、高速の分散機は液面に渦ができることがある(みづほ工業)一方、真空で脱泡できる機種がある(井上製作所)ことを示しています。症状Eの「粉体の混合機を選ぶ」の「◎」は、偏析現象がほとんど発生しないとする混合機(ホソカワミクロン)と、混合機の形で混合の進み方が違うとする粉体工学会の用語辞典、「混ざり方を測る」の「○」は、サンプルの成分のばらつきで混合度を表すとする用語辞典と、DEM をもとにした粉体の解析(アールフロー)と、サンプルの量で見かけの均一性が変わるとする解説(日本薬剤学会誌)を示しています。◎は、業界の資料や企業の情報で、その症状に直接はたらくとされている対策、○は効果が期待できる対策、△は条件によって有効な対策を示します(記号の根拠は、下の「解決技術の詳細」と企業紹介の各出典です)。空欄は、その対策だけでは直接の対策になりにくいことを示します。
課題の診断と解決策
むらが、槽の上下(A)、粘い液の外側(B)、粉を入れたとき(C)、液面(D)、粉どうしの混合(E)のどこに出ているかで分けると、まず見る対策の見当をつけられます。症状ごとの詳しい見方は、下のカードで確かめてください。

出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成
槽の上下で濃度・温度が違う/粒子が底に沈む
上と下で取った液の濃度が違う。止めると底に粉がたまっている。ジャケットの近くだけ温度が高い。
- 起きている現象
- じゃま板のない槽で翼を回すと、液は翼といっしょに回る(旋回流)だけで、上下には混ざりにくくなります。新潟大学の講義資料は、じゃま板は混合不良のもとになる旋回の流れを抑えて混合を良くするとしています。粒子は、回転数が足りないと底に残ります。
- 解決に使える技術
- じゃま板を入れる・翼をずらす上下に回る流れをつくる
- 翼の種類・位置を見直す軸流の翼・大型翼
- 流れを測る・計算する沈む所・止まる所を見つける
じゃま板を入れると、撹拌に要る動力は増えます。モーターと減速機に余裕があるかを先に確かめます。粒子は「底に残らない」と「槽全体で均一」とで要る回転数が違うので、どちらが目的かを決めておきます(編集部の解説)。
粘い液で、翼のまわりしか動かない
翼の近くはよく混ざるのに、壁ぎわや液面の近くが動いていない。色を入れると、いつまでも消えない所がある。
- 起きている現象
- 液が粘いと、同じ回し方でも流れは層流に近づき、翼の力が届く所だけが動いて、外側が止まることがあります。名古屋工業大学ほかの論文では、アンカー翼で多くの未混合の所ができ、パドル翼を多段にするとドーナツの輪の形の混ざらない所ができるとしています。
- 解決に使える技術
- 高粘度用の翼・大型翼に替える槽全体を動かす
- 低速の大きな翼+高速の翼にする2軸のミキサー
- 混ざらない所を見つける脱色法・流れの観察
回転数を上げても、層流のままだと混ざらない所が残ることがあります。翼を大きくすると、要るトルクが増えるので、減速機と軸の強さも合わせて見ます(編集部の解説)。
粉が液に入らない・ダマ(ままこ)になる
増粘剤の粉を入れたら、表面だけぬれたかたまりが浮いて、いくら回しても溶けない。
- 起きている現象
- ユニテックフーズの解説は、粉が散る前に表面の分子が水和してふくらむと、中まで水がしみ込みにくくなり、これがダマ(ままこ)だとしています。一度できたダマを完全に溶かすには、強いせん断や温度を上げることが要るとしています。
- 解決に使える技術
- 高せん断の分散機で一気に散らすダマができる前に分散
- 散りやすい粉と先に混ぜる粉どうしで混ぜてから入れる
- 入れ方・入れる順番を変える油などに先に分散
強いせん断は、増粘剤の分子を切ってしまうおそれがあるとも説明されています(ユニテックフーズ)。粘りが下がっては困る製品では、せん断の強さと時間を試験で決めます。
液面に渦ができ、空気を巻き込む・泡立つ
回転を上げたら液面が大きくくぼみ、翼まで空気が吸い込まれた。製品に泡が残る。
- 起きている現象
- じゃま板のない槽では、液が翼といっしょに回り、液面がくぼんで渦ができます。神戸大学の研究紹介は、じゃま板を入れると渦(ボルテックス)が消え、上下の循環流ができて混合が良くなるとしています。ビメーズは、翼をずらして付けると液面の渦を抑えられ、空気の巻き込みや泡立ちの対策にもなるとしています。
- 解決に使える技術
- じゃま板を入れる・翼をずらす旋回流を止める
- 液面を乱さない撹拌機にする往復回転式など
- 真空にして泡を抜く真空で脱泡できる機種
じゃま板を入れられない槽(洗いやすさが要る槽など)では、翼をずらす方法が候補になります。ビメーズは、ずらすと軸にかかる横向きの力が増え、軸受の摩耗が心配になるとしています。軸受と軸の強さを、撹拌機のメーカーと確かめます(編集部の解説)。
粉どうしの混合で、むら・偏析が出る
長く混ぜたのに、取る場所で成分が違う。混合機から出して袋に詰めたら、上と下で違っていた。
- 起きている現象
- 粉体工学会の用語辞典は、粒子の大きさや密度に差がある粉では偏析が起きるとし、混ぜ続けると混ぜる作用と分ける作用が釣り合った状態(最終混合度)になるとしています。物性の差のある粉では、ある時間でいちばん良く混ざったあと、再び分かれて悪くなる例もあるとしています。
- 解決に使える技術
- 偏析の出にくい混合機を選ぶ容器回転型・機械撹拌型
- 混合度を測って時間を決めるサンプリングの取り方も決める
- 混合機の中の動きを計算するDEM(粒子の計算)
長く混ぜるほど良いとは限りません。混合機から出したあとの充填や排出のときにも、小さい粒が下へ抜けて偏析が起きます(粉体工学会の用語辞典)。混合機の出口だけでなく、詰めたあとも測ります。
なぜ、撹拌・混合のむらが起きるのか
じゃま板がないと、液は回るだけで上下に混ざらない
槽の中で翼を回すと、液は翼に引きずられていっしょに回ります。この旋回流が強いと、液面がくぼんで渦ができ、液は同じ高さを回るだけで、上下の入れ替わりが少なくなります。名古屋工業大学ほかの論文は、じゃま板は槽の中の旋回流を、混合に有利な上下の循環流に変えるとし、同時に撹拌に要る動力も上がるとしています。
通気撹拌では、一般に槽の直径の1/10 の幅のじゃま板を4枚入れて運転されるとしています(名古屋工業大学ほかの論文)。じゃま板を入れても動力がそれ以上増えなくなる条件を「完全邪魔板条件」と呼び、新潟大学の講義資料では、じゃま板の幅と枚数から求める式を紹介しています。

出典:名古屋工業大学ほか(2014年)・新潟大学「撹拌槽内流動」をもとに AI(Claude)で作成
液が粘いと流れは層流に近づき、翼の外が止まる
槽の中の流れの様子は、撹拌レイノルズ数 Re = ρnd²/μ(ρ:液の密度、n:回転数、d:翼の直径、μ:粘度)で見当をつけます。新潟大学の講義資料は、Re を粘性力に対する慣性力の比としています。大まかには、Re が10以下で層流、10⁴〜10⁵ より大きいと乱流、その間が遷移域です(名古屋工業大学ほかの論文、新潟大学の講義資料)。
編集部の計算で、翼の直径0.3m、毎分120回転、密度1,000kg/m³ と置くと、水(0.001Pa・s)では Re は約180,000 の乱流ですが、10Pa・s では約18、100Pa・s では約1.8 になります。同じ翼・同じ回転数でも、粘度が上がると層流に近づき、翼の近くしか動かなくなります。撹拌に要る動力は P = Np・ρ・n³・d⁵ で、じゃま板のある槽の乱流では、動力数 Np はほぼ一定です(新潟大学の講義資料)。じゃま板のある槽で、平板パドル翼(乱流での Np 1.70)で水を毎分120回転で回すと約33W、回転数を2倍にすると約264W と、8倍になります(編集部の計算)。

出典:編集部が計算し、新潟大学「撹拌槽内流動」をもとに AI(Claude)で作成
粘い液・流れにくい液では、混ざらない所が残る
力を加えないと流れない液(降伏応力のある液)では、動力が足りないと翼のまわりだけが動く領域(キャバーン)ができ、その外は止まったままになります(大阪大学の論文の要旨)。高粘度でゆっくりした流れの撹拌では、翼の近くに混ざらない「孤立混合領域」ができ、翼そのものを発熱させてなくす研究もあります(神戸大学の研究紹介)。
名古屋工業大学ほかの論文は、アンカー翼は多くの未混合の所ができてヘリカルリボン翼などより混合が劣り、パドル翼を多段にするとドーナツの輪の形の未混合の所ができるとしています。大型の2枚パドル翼では、降伏応力のある液で壁の近くが混合不良になるともしています。

出典:化学工学論文集(2000年)・名古屋工業大学ほか(2023年)・神戸大学(2020年)をもとに AI(Claude)で作成
粉は、表面だけぬれるとダマになる
ユニテックフーズの解説は、増粘多糖類の粉が散る前に表面の分子が水和してふくらむと、中まで水がしみ込みにくくなり、これがダマ(ままこ)だとしています。水と仲が良い粉ほど、また水が十分にある高粘度の液ほど、ダマになりやすいとしています。ダマは、できてから壊すより、できる前に散らすほうが楽です(編集部の解説)。

出典:ユニテックフーズ「ダマを作らない増粘多糖類の溶解方法」をもとに AI(Claude)で作成
粉どうしは、混ぜながら分かれていく
粉体の混合では、粒子の動きに混ぜる作用と分ける作用の両方があり、粒子径の分布や密度に差があると偏析が起きます(粉体工学会の用語辞典)。粒子径の偏析は、粒度分布があるためにいちばん目立ちやすく、充填や排出のときに小さい粒が大きい粒のすき間を通って下へ抜けます。密度の差は、ふつうの混合物では2〜3倍しか違わないので、粒度の偏析ほど目立たないとしています。
日本薬剤学会誌の解説は、粒子の大きさや密度の違う粉では、混合の初めは均一に近づいても、その後は混合性が下がり、いくら混合時間を長くしても混合は進まないことがあるとしています。

出典:粉体工学用語辞典「粒子径偏析,粒度偏析」・同「最終混合度」・薬剤学 64(5)をもとに AI(Claude)で作成
原因の切り分け方:どこに、いつむらが出るか
次は編集部の整理です。まず、液の撹拌か、粉どうしの混合かを分けます。液なら、粘度から Re の見当をつけ、層流に近ければB(翼の形)を疑います。液面の渦や底の沈殿があればD・A(じゃま板・偏心・翼)、粉を入れたときのかたまりならC(分散と入れ方)です。そのうえで、どこで、どれだけむらがあるかを、脱色法やサンプリングで測ってから対策を選びます。

出典:この記事の内容をもとに AI(Claude)で作成
出典:反応装置工学「撹拌槽内流動」(2023年改訂版)|新潟大学 三上貴司、邪魔板無しおよび弱い邪魔板条件の気液撹拌槽における所要動力と物質移動(2014年)|名古屋工業大学 学術機関リポジトリ、多目的変形合体多段翼(AM翼)の新規開発(2023年)|名古屋工業大学 学術機関リポジトリ、降伏応力を有する非ニュートン流体撹拌流動域の成長過程と動力特性|化学工学論文集(J-STAGE)、加熱型撹拌翼を用いた撹拌槽内の孤立混合領域の動的挙動(2020年)|神戸大学 輸送科学工学研究室、ダマを作らない増粘多糖類の溶解方法|ユニテックフーズ 食品開発ラボ、粒子径偏析,粒度偏析|粉体工学用語辞典(粉体工学会)、密度偏析|同、最終混合度|同、粉体の混合過程と混合均一性の話|薬剤学 64(5)(J-STAGE)
解決技術の詳細
撹拌・混合のむらの対策は、①翼の形と大きさを液に合わせる、②じゃま板や翼の位置で槽の中の流れを変える、③粉を液に入れるときは強いせん断と入れ方で散らす、④粉どうしは合う混合機を選ぶ、⑤混ざり方を測って確かめる、の5つに分けられます。先に⑤で今の混ざり方を測り、むらの場所をはっきりさせてから①〜④を選ぶと、むだが少なくなります(編集部の解説)。
翼の形・大きさを見直す
名古屋工業大学の論文は、パドル翼・タービン翼・プロペラ翼は主に低粘度液用、アンカー翼・ヘリカルリボン翼は主に高粘度液用としています。新潟大学の講義資料は、プロペラ翼は吐き出す作用が高い軸流、平板タービン翼は吐き出す作用とせん断の作用がともに高い放射流の翼とし、アンカー翼は槽の壁の近くの流れが速い一方で上下の撹拌が望めず、槽の中心部の混合が悪いとしています。ヘリカルリボン翼は、上下の流れが中心になるとしています。
槽の高さいっぱいの幅の広い翼(大型翼)もあります。名古屋工業大学ほかの論文は、マックスブレンド(住友重機械プロセス機器)、フルゾーン(神鋼環境ソリューション)、スーパーミックス MR205(佐竹化学機械工業)を挙げ、回転数を低く抑えられ、広い粘度範囲で使えるとしています。翼を替えるときは、粘度の範囲と、要るトルク・動力を合わせて比べます(編集部の解説)。

出典:名古屋工業大学ほか(2012年)・新潟大学「撹拌槽内流動」をもとに AI(Claude)で作成
じゃま板・偏心で流れを変える
じゃま板は、旋回流を上下の循環流に変えます。神戸大学の研究紹介は、じゃま板を入れると渦(ボルテックス)が消え、上下の循環流ができて混合性能が上がり、撹拌に要る動力も増えるとしています。よく使われるのは、槽の直径の1/10 の幅のじゃま板を4枚入れる条件です(名古屋工業大学ほかの論文)。直径1m の槽なら、幅は約100mm になります(編集部の計算)。
じゃま板を入れにくい槽では、翼を中心からずらす(偏心)方法もあります。ビメーズは、翼を槽の直径の5〜10%ほどずらすと、液の流れが斜めに折れて上下・半径方向の循環が増え、液面の渦も抑えられるとしています。直径1m の槽なら50〜100mm です(編集部の計算)。一方、軸にかかる横向きの力は中心に付けたときの1.3〜1.5倍になり、軸受の摩耗が心配になるとしています。

出典:名古屋工業大学ほか(2014年)・ビメーズ「混ぜるものに合わせた撹拌位置の調整」をもとに AI(Claude)で作成
高せん断の分散機・粉の入れ方
粉を液に入れてダマにしないには、粉が表面だけぬれる前に散らします。ユニテックフーズは、高速でせん断できる機器なら、ダマができる前に分散でき、できてしまったダマも物理的に壊せるとしています。ただし、大きなダマは壊しにくいとしています。ほかに、砂糖など散りやすい粉と先に混ぜてから入れる、油や高糖度の液、アルコールに先に分散してから水を加える、といった方法を挙げています。
高速の分散機には、のこぎり歯の円板(ディスパー)、回る羽根と固定した羽根のすき間でせん断するもの(ホモミキサー)などがあります。粘い液では、液全体を回す低速の大きな翼と、一部で強く散らす高速の翼を1台にした2軸のミキサーも使われます(井上製作所)。高速で回すと渦ができることもあるので、泡が困る製品では、真空にして泡を抜ける機種を選びます(編集部の解説)。

出典:みづほ工業「高速撹拌機による流動状態」・井上製作所「BDM2軸ミキサー」・ユニテックフーズをもとに AI(Claude)で作成

出典:井上製作所「ディゾルバー」
粉体の混合機を選ぶ
粉体工学会の用語辞典は、混合機を、容器を回す「回転容器型」、固定した容器の中で羽根を回す「固定容器型(機械撹拌式)」、気流で混ぜる型などに分けています。V型混合機は、2つの円筒を V 字に合わせた容器を回して三次元的に交差させながら混ぜるもので、回転速度を適正にすれば良い混合度が得られるとしています。リボンミキサーは、容器の中でリボン状の羽根を回す、固定容器型の代表的な混合機としています。
混合機を選ぶときは、粉の流れやすさ、粒の大きさと密度の差、壊したくない粒か、液を加えるか、1回に混ぜる量で比べます(編集部の解説)。多くの混合機メーカーはテスト機を持っているので、実際の粉で混合度を測って比べます。

出典:粉体工学用語辞典「混合機」・同「V型混合機」・同「リボンミキサー」・ホソカワミクロン「ナウタミキサ」をもとに AI(Claude)で作成

出典:徳寿工作所「ジュリアミキサー」
混ざり方を測る・解析する
液の混ざり方は、混合時間で比べるのが基本です。新潟大学の講義資料は、混合時間が短いほど撹拌の性能が良いとし、混合時間と回転数の積 nθM を使った式を紹介しています。名古屋工業大学ほかの論文は、この積(無次元混合時間)で翼の混合性能を比べています。名古屋工業大学ほかの論文では、ヨウ素の液にチオ硫酸ナトリウムを入れて色が消えるまでを見る脱色法で、混合時間と混ざりにくい所を調べています。透明な槽で蛍光の液を入れ、断面をレーザー光で照らして流れを見る方法もあります(名古屋工業大学の論文)。
粉の混ざり方は、いくつもの場所からサンプルを取り、着目する成分のばらつき(不偏分散・標準偏差)で表します(粉体工学会の用語辞典)。日本薬剤学会誌の解説は、混合度の指標に決まった1つの値はなく、サンプルの量を増やすと、混合の状態が変わっていなくても見かけ上均一に見えるとしています。サンプルの量と場所を先に決めてから測ります。流れの計算(CFD)や、粒子の動きの計算(DEM)を使えば、試作の前に翼や混合機の形を比べられます(編集部の解説)。

出典:名古屋工業大学ほか(2023年)・名古屋工業大学ほか(2014年)・粉体工学用語辞典「混合度」・薬剤学 64(5)をもとに AI(Claude)で作成
出典:種々の大型2枚パドル翼の撹拌所要動力(2012年)|名古屋工業大学 学術機関リポジトリ、流脈観察に基づく大型翼の混合機構(2014年)|名古屋工業大学 学術機関リポジトリ、反応装置工学「撹拌槽内流動」(2023年改訂版)|新潟大学 三上貴司、撹拌槽内の所要動力に及ぼすバッフルの形状効果(2023年)|神戸大学 輸送科学工学研究室、混ぜるものに合わせた撹拌位置の調整|ビメーズ、ダマを作らない増粘多糖類の溶解方法|ユニテックフーズ 食品開発ラボ、混合機|粉体工学用語辞典(粉体工学会)、V型混合機|同、リボンミキサー|同、混合度|同、最終混合度|同、多目的変形合体多段翼(AM翼)の新規開発(2023年)|名古屋工業大学 学術機関リポジトリ、粉体の混合過程と混合均一性の話|薬剤学 64(5)(J-STAGE)
撹拌・混合のむらをなくす技術を持つ企業
各企業が解決できる課題と技術の内容を、企業が公開している情報をもとに紹介します。粘い液なら翼、液面の渦ならじゃま板の要らない撹拌機、粉を入れるなら分散機、粉どうしなら混合機、確かめるなら解析、というように、困りごとで合う相談先が変わります。
株式会社神鋼環境ソリューション|広い粘度で使える大型翼と試験装置
神鋼環境ソリューションとは
神鋼環境ソリューションは、兵庫県神戸市中央区に本社がある、水処理・廃棄物処理の設備や化学・医薬向けのプロセス機器の会社です。1954年に神鋼ファウドラーとして設立された会社が前身です(同社の沿革)。
神鋼環境ソリューションの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 大型翼「フルゾーン」 | 2枚の幅の広いパドル翼を上下で交差させて付け、極めて広い粘度範囲で効率よい混合ができる撹拌翼としている |
| 混合時間と粘度 | 資料では、単位体積あたりの動力(Pv 値)が同じなら従来の翼に比べて混合時間を半分にでき、100Pa・s の高粘度まで使え、特に0.001〜30Pa・s では従来の翼より効率よく混ぜるとしている |
| 溶解・粒子の浮遊 | 溶解槽の事例で溶解時間を1/2以下に短縮、粒子の均一浮遊と液滴分散を平均で半分の動力で達成したとしている |
| 試験装置 | 60L(槽の内径400mm×高さ800mm)の透明な槽のコールドテスト装置で、フルゾーンなどの翼を替えて、混合・粒子の浮遊などを試せるとしている |
数値は同社が比べた条件での値です。自分の液の粘度・粒子・槽の形で、試験装置で確かめてから選びます(編集部の解説)。
神鋼環境ソリューションが解決できる課題
- 粘度の違う液を、同じ槽で効率よく混ぜたい
- 槽の底に粒子が沈む・上下で濃度が違う
- 混合・溶解の時間を短くしたい

出典:神鋼環境ソリューション「フルゾーン」・同 資料をもとに AI(Claude)で作成
出典:会社概要|神鋼環境ソリューション、沿革|神鋼環境ソリューション、フルゾーン|神鋼環境ソリューション、フルゾーン(資料)|神鋼環境ソリューション
株式会社島崎エンジニアリング|邪魔板の要らない往復回転式の撹拌機
島崎エンジニアリングとは
島崎エンジニアリングは、茨城県常総市に本社・工場がある、撹拌機の会社です(1986年設立。創業は1919年)。往復回転式の撹拌機「アジター」を作っています。
島崎エンジニアリングの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 往復回転式撹拌機「アジター」 | 三角翼を付けた撹拌軸が、一方向に回るのではなく1/4回転ごとに反転する撹拌機。液面が平らで、邪魔板が要らないとしている |
| 粘度と大きさ | 10万mPa・s の高粘度液まで撹拌できるとし、動力0.2〜110kW、容量500mL〜200,000L としている |
| 翼の向き | 三角翼を下向きに付けると液面が平らで脱泡や沈降防止がしやすく、上向きにすると気泡や浮遊物を混ぜ込めるとしている |
| 側面式撹拌機 | 大型の貯槽の横から付けて、温度の均一化・溶解・希釈・沈降防止に使うとしている |
往復回転は、ふつうの回転式の撹拌機とは流れ方が違います。今の翼から替えるときは、同じ液でテストして混ざり方を比べます(編集部の解説)。
島崎エンジニアリングが解決できる課題
- 液面の渦で空気を巻き込む・泡立つ
- じゃま板を入れられない槽で、上下に混ぜたい
- 粘い液や、底に沈む物を混ぜたい
公開されている実績
- 沿革で、1974年に300馬力の大型撹拌テストができるようにしたとしている

出典:島崎エンジニアリング「往復回転式撹拌機アジター」をもとに AI(Claude)で作成
出典:会社概要|島崎エンジニアリング、沿革|島崎エンジニアリング、往復回転式撹拌機アジター|島崎エンジニアリング、側面式撹拌機アジター|島崎エンジニアリング
株式会社井上製作所|高粘度用の2軸ミキサーと試用テスト
井上製作所とは
井上製作所は、神奈川県伊勢原市にある、ミキサー(撹拌機・混練機)と分散機の会社です(1916年創立)。
井上製作所の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| BDM2軸ミキサー | 高粘度用の低速のバタフライミキサーと、高速で高せん断のディゾルバーを1台にまとめたミキサー。真空フード・真空軸シールで脱泡ができ、ジャケットで加熱・冷却できるとしている(槽400〜1,600L) |
| ディゾルバー | 凝集した粉粒体を壊すのに効果があるとしている |
| 機械の試用テスト | 粘度・比重などを聞き取ったうえで、立会いかサンプルの送付でテストし、温度・圧力・流量・動力の負荷・粘度を記録した結果をデータで渡し、希望すればテストデータを分析したレポートも出すとしている。粒度分布計・グラインドゲージ・B型粘度計がある |
井上製作所が解決できる課題
- 粘い液に粉を入れると、かたまりが残る
- 粘い液を、外側まで動かして混ぜたい
- 混ぜたあとの泡を抜きたい

出典:井上製作所「BDM2軸ミキサー」
出典:会社概要|井上製作所、BDM2軸ミキサー|井上製作所、ディゾルバー|井上製作所、機械試用テスト|井上製作所
みづほ工業株式会社|粉を散らす高速撹拌機と試験の設備
みづほ工業とは
みづほ工業は、大阪市西成区に本社がある、乳化・分散・撹拌の装置の会社です(1960年設立)。
みづほ工業の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| ディスパーミキサー | のこぎり歯の円板が高速で回り、粉体のような固体の粒子を液体に分散させる系に適しているとしている |
| ウルトラミキサー | キャビテーションによる吸引力と、回るフードのかき込みで製品を中に吸い込み、高粘度の製品にも効果があるとしている |
| テクニカルセンター | 2L→20L→200L と10倍ずつ大きくしてスケールアップの成否を確かめるとし、粒度分布計・マイクロスコープ・防爆の試験室があるとしている |
同社のサイトには、高速撹拌機の流れの様子を回転数ごとに見られる動画のページ(カクハンラボ)があります。
みづほ工業が解決できる課題
- 粉が液に入らない・ダマ(ままこ)になる
- 粘い製品に粉を分散させたい
- 小さな試験機の結果を、大きな槽で確かめたい

出典:みづほ工業「高速撹拌機による流動状態」・同「テクニカルセンター」をもとに AI(Claude)で作成
出典:会社概要|みづほ工業、高速撹拌機による流動状態(カクハンラボ)|みづほ工業、テクニカルセンター|みづほ工業
株式会社徳寿工作所|V型・無限ミキサーなど粉体の混合機
徳寿工作所とは
徳寿工作所は、神奈川県平塚市にある、粉体の混合機・乾燥機などの会社です(1924年創立)。
徳寿工作所の得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| V型混合機 | 容器ごと回す混合機で、粉粒体に無理な力をかけない優しい混合、バッチごとの品質管理ができるとしている |
| 無限ミキサー | 容器の円筒部を傾けて、軸の近くの材料にも動きを与え、約70%までの高い充填率で混ぜられるとしている |
| ジュリアミキサー | スクリュー羽根とチョッパーで、凝集しやすい粉体の分散混合や、ダマのない油脂の添加混合が短時間でできるとしている |
| 試験設備 | V型・W型・リボン・無限ミキサー・ジュリアミキサーなどのテスト機をそろえている |
徳寿工作所が解決できる課題
- 粉どうしの混合で、むらが出る
- 凝集しやすい粉や、液を少し加える粉を混ぜたい
- 混合機の形を、テスト機で比べたい

出典:徳寿工作所「V型混合機」
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ホソカワミクロン株式会社|偏析の出にくいナウタミキサ
ホソカワミクロンとは
ホソカワミクロンは、大阪府枚方市に本社・工場がある、粉体の処理装置の会社です(1949年設立。創業は1916年)。
ホソカワミクロンの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| ナウタミキサ | 逆円錐形の容器の壁に沿ってスクリューが自転・公転するバッチ式の混合機。粉体の動きは穏やかだが、偏析現象がほとんど発生しないとしている |
| 混合の時間 | 単純な混合なら、300L クラスで3〜10分、3,000L クラスで15〜45分で終わるとしている |
| そのほか | 発熱が少なく低融点の物質も混ぜられ、液を加えるオプションやラボ用の小型機があるとしている |
同社は、ナウタミキサの納入実績を2万台以上としています。
ホソカワミクロンが解決できる課題
- 粉どうしの混合で、偏析が出る
- 粒を壊さず・熱を出さずに混ぜたい

出典:ホソカワミクロン「ナウタミキサ」
出典:会社概要|ホソカワミクロン、事業所案内|ホソカワミクロン、ナウタミキサ|ホソカワミクロン
株式会社アールフロー|撹拌槽の流れと粉体の解析
アールフローとは
アールフローは、埼玉県草加市に本社がある、流体解析ソフトの会社です(1996年設立)。
アールフローの得意技術
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| 流体解析ソフト「RFLOW」 | 1990年当時は解析が難しかったじゃま板付きの撹拌槽の流れを解析するために開発した商用のソフトとし、いろいろな撹拌翼・撹拌槽・スクリュー押出機のデータベースを持つとしている |
| 粉体・混相流の解析 | DEM をもとにした代表粒子モデルで粉体の解析に広げたとしている。解析事例集では、撹拌槽の中の液滴の分裂・合一(液液分散)の解析や、通気した培養槽のガス吸収の解析を挙げ、回転数が低いと槽の上部に混合不良で十分な呼吸ができない領域が出る例を示している |
| 流れの計測「R-VIEW」 | 透明な水槽の流れに粒子を入れ、2台のビデオの画像から粒子の動きを3次元で追い、軌跡と時間で平均した流速の分布を出すとしている。解析は受託もしている |
アールフローが解決できる課題
- 翼や槽を替える前に、流れの違いを比べたい
- どこが混ざっていないかを見たい
- 粉体の動きを計算で確かめたい

出典:アールフロー「製品」・同「RFLOW 解析事例集」をもとに AI(Claude)で作成
出典:会社概要|アールフロー、製品|アールフロー、RFLOW 解析事例集|アールフロー
選ぶ前に確かめる条件
相談する前に、次の条件を整理しておくと、話が早くなります。
- 液の粘度(温度・混ぜている途中での変化も)と密度、力を加えないと流れない液かどうか
- 槽の直径・液の深さ・底の形、今の翼の種類・直径・回転数、じゃま板の有無
- 粒子・粉の大きさと密度、入れる量と入れ方(一度に・少しずつ)
- どこに、どれだけむらがあるか(取った場所と、測った値)
- 泡を嫌うか、粒や分子を壊したくないか、熱を出したくないか
- 混ぜる時間の目標と、1回に混ぜる量(バッチか連続か)
- モーター・減速機・軸の余裕(動力とトルク)、洗浄や防爆などの条件
関連する課題
この課題に関係する分野・技術・製品のページ
※アイキャッチ画像は、AI(ChatGPT)で生成したイメージです。実在の製品ではありません。
情報の確認日:2026年10月6日
